教会―キリストを囲む交わり

パレスチナの現実

          川越基督教会 牧師 司祭 サムエル 輿石 勇     

    教会を指す言葉にも、外観を指すものと中身を指すものがあります。
    もともと教会の外観を指したものは英語ではチャーチで、中身を指す数ある英語の代表は 
    コミュニオン(交わり)と言うことができそうです。
    そんなわけで、「教会―キリストを囲む交わり」という表題をつけさせて頂きました。

    コミュニオンとしての教会は、クリスチャンの集会所を本来意味した、チャーチとは違って、
    外見に現われることのない中身に他なりません。

    例えば、わたしにはパレスチナという場所にある聖公会という交わりに属している
    何人かの友人がおります。いろいろな機会にいろいろな場所で知り合ったこの友人たちが、
    今から丁度
10年前に、エルサレムにある聖公会の教会や
    ナザレにある教会立の学校などを会場とした体験ツアーを計画してくれました。

    パレスチナを体で体験するこの機会によって、現在の世界の政治の現実に対する
    わたしの見方は根本的に変えられることになりました。

    今、世界の耳目を集めていることの一つに、
    イスラエル軍によるガザへの武力攻撃があります。この攻撃がなぜ始まったのか、
    また、この攻撃の背後にどのような出来事が行われているかについて、
    細かい報告はありません。

    しかし、基本的な原因や対応策などは個人的なパレスチナ体験と
    パレスチナの友人たちからの通信ですぐに明らかになります。

    今回の、パレスチナ人のかつてない憤りを惹き起こした、イスラエル軍による対ガザ攻撃は、
      612日に3人のイスラエル人の少年が誘拐され殺されたということに起因します。
    本来ならば、その誘拐殺人事件の捜査によって犯人を特定し、
    法に基づいて審理されるのが当然です。

    しかし、イスラエル側は、ただちにパレスチナ人過激派ハマスの犯行と断定し、
    パレスチナ人に対する報復と称する無差別の攻撃を加えた模様です。

    その流れの中で、パレスチナ人の少年がイスラエル人によって惨殺されたということは
    報道されています。それに対してガザから砲撃が起こり、
    それに対してイスラエル軍によるガザ地域の無差別攻撃が連日行われることになりました。

    国連や米国の仲介による休戦協定の破棄をも含めて、
    イスラエル側の一連の対応に認められる余裕のなさは、
    イスラエルの抱える不安の深刻さの現れのように思えてなりません。

    わたしの友人の一人は『ガザで焼かれている子どもたちのために』と題する
    緊急アッピールの中で、「ガザから発射されるパレスチナ人のロケット砲は、
    『イスラエル人による占領を停止させ、パレスチナを解放せよ』という
    重要なメッセージだ」と書いています。

    この発言は、イスラエル人は自分たちの国境を明確に定義したことがないという、
    別の発言と繋がっています。つまり、パレスチナはイスラエル人が占領しているけれども
    イスラエルの国土ではないということです。

    パレスチナ人と少数のユダヤ人が長年にわたって平和共存してきたパレスチナの姿を
    回復しようというメッセージと読み替えることができるのではないでしょうか。

    このような主張は何もパレスチナ人だけがしているのではなく、
    パレスチナに住むイスラエル人の多くも同じことを主張しています。
    一例として、この友人が紹介してくれたイスラエル人の学者たちの声明をご紹介しましょう。

   この声明に署名する者は全てイスラエルにある大学の学者です。
   ここに署名する者全てがイスラエル政府による侵略的な軍事戦略を
   全く遺憾に思っていることを公表いたします。
   パレスチナ占領とパレスチナ人に対する際限のない抑圧に代わる唯一の選択肢は
   協議による合意という手段以外にはありません。
   おびただしい数に及ぶ全く無辜の人々の殺戮は流血という障壁の積み重ねに他なりません。
   イスラエルは即時の停戦に合意し、正義を伴う平和の合意によって、
   占領の終結と和解への強い希望をもって、協議を開始すべきです。

        (http://haimbresheeth.com/gaza/an-open-letter-to-israel-academics-july-13th-2014

    このようなメッセージをより多くの方々にお伝え申し上げることも、
    交わり(コミュニオン)に属する者にできるささやかな務めだと思います。